データde出〜た
第57回 長距離戦は騎手で買え!?
2006/2/8(水)
競馬の世界には昔から「長距離戦は騎手で買え」という格言がある。微妙な駆け引きが要求される長丁場の道中では、騎手の技量が非常に重要になるというわけだ。データから見えてくる長距離戦における騎手の狙い方とは?
今週は東京競馬場でダイヤモンドSが行われる。04年から従来の距離より200m延長された芝3400mで施行。平地のレースでは、年末のステイヤーズSに次いで長い距離で行われる。競馬の世界には「長距離は騎手で買え」という格言がある。道中の若干のロスは、短距離に比べて致命的なミスにはなりにくいももの、騎手が色々乗り方を工夫できる時間的なゆとりがある。折り合い、位置取り、仕掛け所…長距離戦は騎手の技量差が出やすいレースなのかもしれない。
そこで過去のデータを元に、長距離戦における騎手別成績を調べてみた。長距離戦の定義は曖昧な点があるのだが、ここでは2500m以上のレースを対象とした。データの調査はJRA-VAN Data Lab.とTarget frontier JVを利用した。
■表1 1000万クラス以上の芝2500m以上における騎手別成績(96年以降)(1)
騎手 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
| 武豊 | 26-15-11-49/101 | 25.7% | 40.6% | 51.5% | 68% | 75% |
| 蛯名正義 | 23-14-17-92/146 | 15.8% | 25.3% | 37.0% | 138% | 82% |
| 横山典弘 | 18-17-16-83/134 | 13.4% | 26.1% | 38.1% | 112% | 93% |
| 後藤浩輝 | 14-7-6/73/100 | 14.0% | 21.0% | 27.0% | 121% | 73% |
| 松永幹夫 | 11-4-11-73/99 | 11.1% | 15.2% | 26.3% | 82% | 51% |
| 和田竜二 | 10-6-3-50/69 | 14.5% | 23.2% | 27.5% | 190% | 110% |
| ペリエ | 9-2-4-16/31 | 29.0% | 35.5% | 48.4% | 150% | 88% |
| 菊沢隆徳 | 8-0-3-47/58 | 13.8% | 13.8% | 19.0% | 400% | 61% |
| 小原義之 | 7-7-1-44/59 | 11.9% | 23.7% | 25.4% | 365% | 120% |
| 安田康彦 | 6-6-5-30/47 | 12.8% | 25.5% | 36.2% | 80% | 128% |
| 小林淳一 | 6-4-3-37/50 | 12.0% | 20.0% | 26.0% | 187% | 86% |
| デムーロ | 6-2-4-14/26 | 23.1% | 30.8% | 46.2% | 61% | 65% |
| 渡辺薫彦 | 6-0-4-26/36 | 16.7% | 16.7% | 27.8% | 113% | 41% |
| 角田晃一 | 5-4-4-42/53 | 9.4% | 15.1% | 20.8% | 140% | 63% |
| 芹沢純一 | 5-3-2-43/53 | 9.4% | 15.1% | 18.9% | 106% | 70% |
| 本田優 | 4-4-2-34/44 | 9.1% | 18.2% | 22.7% | 157% | 118% |
| バルジュ | 4-3-2-10/19 | 21.1% | 36.8% | 47.4% | 54% | 75% |
上の表1は96年以降、1000万クラス以上の芝2500m以上の騎手別成績の一部。基本的には勝ち鞍が多い順に騎手を並べているが、それに加えて着別度数によって分類を行っている。1〜3着の数に注目し、そのうち1着の数が最も多い主な騎手を記載している。
まずは、日本のNo.1ジョッキー武豊騎手。長距離戦においても例外はなく、日本で一番勝っている。連対率・複勝率も高く、長距離戦に出てくれば2回に1回は馬券になっている。ただし、回収率は低め。実力・人気のある馬を乗った時は、キッチリ仕事をしているが、穴馬を上位に持ってきているケースはほとんどない(人気薄の騎乗機会自体が少ないのだが)。武豊騎手の騎乗技術の高さは疑う余地はないと思うが、データから長距離戦が抜群に上手いとまでは言いにくい。
勝利数2位の蛯名正義騎手、3位の横山典弘騎手も好走した時は、1着になることが最も多い騎手。しかも両騎手ともに単勝回収率が100%を超えている。全レースを含めたリーディングの上位にいるだけの力を示してると言えるだろう。
意外なところでは和田竜二騎手の名前が目立つ。10勝のうち4勝がテイエムオペラオーによるものだが、単・複の回収率がともに100%を超えている。つまりは、他に人気薄での好走が多いわけだ。結果は2着だったが、昨年の天皇賞(春)で14番人気のビッグゴールドを持ってきたのは記憶に新しい。隠れた長距離の一発屋として覚えておきたい。
■表2 1000万クラス以上の芝2500m以上における騎手別成績(96年以降)(2)
騎手 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
| 柴田善臣 | 10-19-13-78/120 | 8.3% | 24.2% | 35.0% | 112% | 81% |
| 四位洋文 | 10-15-12-72/109 | 9.2% | 22.9% | 33.9% | 34% | 63% |
| 佐藤哲三 | 7-11-9-44/71 | 9.9% | 25.4% | 38.0% | 98% | 108% |
| 熊沢重文 | 6-13-10-56/85 | 7.1% | 22.4% | 34.1% | 71% | 105% |
| 田中勝春 | 6-12-10-90/118 | 5.1% | 15.3% | 23.7% | 19% | 88% |
| 江田照男 | 6-8-6-64/84 | 7.1% | 16.7% | 23.8% | 459% | 165% |
| 幸英明 | 4-6-3-51/64 | 6.3% | 15.6% | 20.3% | 88% | 61% |
| 木幡初広 | 4-6-2-38/50 | 8.0% | 20.0% | 24.0% | 103% | 97% |
| 安藤勝己 | 4-5-5-29/43 | 9.3% | 20.9% | 32.6% | 158% | 94% |
| 池添謙一 | 3-8-5-34/50 | 6.0% | 22.0% | 32.0% | 99% | 116% |
| 武士沢友治 | 3-6-2-16/27 | 11.1% | 33.3% | 40.7% | 99% | 197% |
| 福永祐一 | 3-5-5-79/92 | 3.3% | 8.7% | 14.1% | 39% | 39% |
| 勝浦正樹 | 2-7-6-51/66 | 3.0% | 13.6% | 22.7% | 13% | 90% |
次の表2は表1と同様の条件で、好走時に2着の数が最も多い騎手を並べたものだ。関東のトップジョッキーである柴田善臣騎手は、長距離戦では2着を量産しているのが特徴。2着の数が1着の倍近くあり、詰めの甘さが目立つ。ただし、単勝の回収率は112%あるので場合によっては頭からも狙える。後述することになるが、特に東京の長距離重賞で実績を残している。
四位洋文騎手は、柴田善臣騎手と勝ち鞍は同じだが内容がイマイチ。回収率が低く、長距離ではあまり美味しい馬券は狙えない。96年以降、重賞勝ちもない。
もっと深刻なのが福永祐一騎手。ここ数年でグングン勝ち鞍を伸ばし、関西のリーディングのトップクラスに名を連ねるようになったが、長距離戦の勝ち鞍はわずか3勝。2、3着の数も少なく、全体の成績に比べて圧倒的に悪いことがわかる。昨年の天皇賞(春)のリンカーンをはじめ、1番人気を頻繁に着外に飛ばしている。長距離戦は苦手なのかも?
■表3 1000万クラス以上の芝2500m以上における騎手別成績(96年以降)(3)
騎手 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
| 藤田伸二 | 16-19-22-74/131 | 12.2% | 26.7% | 43.5% | 54% | 88% |
| 吉田豊 | 7-4-12-94/117 | 6.0% | 9.4% | 19.7% | 36% | 59% |
| 武幸四郎 | 4-5-7-46/62 | 6.5% | 14.5% | 25.8% | 81% | 86% |
| 中舘英二 | 1-9-12-51/73 | 1.4% | 13.7% | 30.1% | 8% | 100% |
| 北村宏司 | 0-0-3-45/48 | 0.0% | 0.0% | 6.3% | 0% | 11% |
表3も表1〜2と同じ流れ。好走時に3着の数が最も多い主な騎手だ。リーディング上位騎手の中では、藤田伸二騎手が該当。勝ち鞍こそ多いものの、実は詰めが甘い。複勝率が43.5%という数字は立派なものだが、馬券の買い方に気をつけたいところだ。
中舘英二騎手は1000万クラス以上の長距離戦では恐ろしく偏った成績。好走する時は、ほぼ2、3着なのだ。
意外だったのが北村宏司騎手。連対経験が一度もなく、3着が2回あるだけ。着外45回という散々な成績だ。これまで上位人気馬の騎乗機会が少ない事実もあるのだが、それにしても他のレース成績とギャップがありすぎる。
■表4 1000万クラス以上の東京芝2500m以上の騎手別成績(96年以降)
騎手 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
| 柴田善臣 | 5-1-2-16/24 | 20.8% | 25.0% | 33.3% | 206% | 86% |
| 佐藤哲三 | 3-1-0-1/5 | 60.0% | 80.0% | 80.0% | 1138% | 356% |
| 蛯名正義 | 2-2-1-18/23 | 8.7% | 17.4% | 21.7% | 47% | 40% |
| 田中勝春 | 2-2-1-17/22 | 9.1% | 18.2% | 22.7% | 52% | 233% |
| 後藤浩輝 | 2-1-2-15/20 | 10.0% | 15.0% | 25.0% | 139% | 86% |
| ペリエ | 2-0-0-4/6 | 33.3% | 33.3% | 33.0% | 183% | 61% |
| 松岡正海 | 1-1-0-0/2 | 50.0% | 100.0% | 100.0% | 1790% | 490% |
| 横山典弘 | 1-0-2-21/24 | 4.2% | 4.2% | 12.5% | 18% | 26% |
| 菊沢隆徳 | 1-0-0-8/9 | 11.1% | 11.1% | 11.1% | 93% | 25% |
| 武豊 | 1-0-0-3/4 | 25.0% | 25.0% | 25.0% | 70% | 32% |
| 武幸四郎 | 1-0-0-5/6 | 16.7% | 16.7% | 16.7% | 351% | 103% |
| 藤田伸二 | 0-3-1-6/10 | 0.0% | 30.0% | 40.0% | 0% | 88% |
| 吉田豊 | 0-1-1-18/20 | 0.0% | 5.0% | 10.0% | 0% | 38% |
最後に表4は東京芝2500m以上の騎手別成績。1000万クラス以上の東京芝コースの長距離戦は、実はほとんどが重賞。つまり目黒記念、アルゼンチン共和国杯、そして今回のダイヤモンドSの過去の傾向だ。
前述したように、東京の長距離重賞は柴田善臣騎手が5勝でトップ。佐藤哲三騎手は5回の参戦で4回馬券になるという、驚異的な相性の良さ。
逆に横山典弘騎手は、東京だと不振。いろいろ工夫を凝らし、作戦を立てて乗る騎手なので、小回りコースの方が小細工がしやすいのかもしれない。武豊騎手は、参戦機会自体がとても少ない。
【結論】
一般的に長距離戦と言われる2500m以上のレースでの騎手別成績を調べると、いろいろな発見がある。通常のリーディングジョッキーの顔ぶれと若干違う面があったり、競走成績の内容から騎手の特徴が伺える。
例えば、近年リーディング上位の常連になっている福永祐一騎手だが、長距離戦においては意外なまでに結果を残していない。柴田善臣騎手、四位洋文騎手は2着が多い、また藤田伸二騎手は3着が多い。
そしてきっちり勝ち星を積み上げている武豊騎手、蛯名正義騎手、横山典弘騎手などは、近年の天皇賞(春)や菊花賞で勝利を収めたりと、長距離戦で目立った活躍をしている。後藤浩輝騎手(サンライズジェガー)、和田竜二騎手(ビッグゴールド)なども、天皇賞(春)で人気薄の馬を好走させたりしている。
個々の競走馬の能力差の問題もあり、これだけを持って騎手の技量の巧拙を言うわけにはいかないが、ある程度の傾向は読み取れる。「長距離戦、“迷ったら”騎手で買え!」ぐらいは、言ってもいいだろうか。頭の片隅にでも留めておいていただきたい。
ライタープロフィール

小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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