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1993年の第53回皐月賞。単勝オッズ2倍の1番人気に支持されたのはウイニングチケットだ。葉牡丹賞、ホープフルS、弥生賞と中山の芝2000mで3連勝中。適性はナンバー1で、父はトニービン、母系からは快足サクラスターオーが出ているという良血馬でもある。 これを3.5倍で追うのがビワハヤヒデ。デビュー以来6戦連続連対中、前走・若葉Sも先行抜け出しで制しており、成績的にも脚質的にも安定感ではこの馬が一番といえた。 3番手が9.2倍のナリタタイシン。暮れのラジオたんぱ杯勝ち馬で、シンザン記念と弥生賞は2着。切れる末脚が自慢だ。 以上3頭による3強対決といわれたこのレース。それぞれの持ち味、置かれた立場、そして展開とが微妙な“アヤ”を作り出し、勝敗を分けることになる。 ロングスパートのスタミナ勝負 アンバーライオンのゆったりとした逃げで進んだレースは、3コーナーから急激に動く。いつも通り好位を行くビワハヤヒデ、4番人気シクレノンシェリフ、5番人気ツジユートピアン、伏兵ガレオン、さらには中団から人気を背負ったウイニングチケットも一気に追い上げて、ペースがグンと上がったのだ。 いわば各馬がロングスパートを仕掛けたようなもの。こうなるとスタミナにまさる馬が有利で、直線でよく粘ったのは、ステイヤー血統・リアルシャダイの子であるガレオンやシクレノンシェリフ。後に菊花賞を勝つことになるビワハヤヒデがこれを上回る頑張りで、いままさに先頭でゴールしようとする。 そこへ驚くべき末脚で迫ったのが、ただ1頭異質なレースを敢行したナリタタイシンだ。ライバルたちが動いた3コーナーでもジっと我慢、最後方に近い位置で脚をため、直線でそのパワーをズドンと解放させる。 最後の最後に追い出しクビ差勝利 それはまさに、目の覚めるような末脚だった。上がり3ハロン推定タイムが35秒を切ったのは、18頭の出走馬のうちナリタタイシンだけ。他の馬とはレベルの違う切れ味で、叩き合いながら粘る先行各馬を鮮やかに交わし、ビワハヤヒデをクビ差だけ差し切って1着となったのである。 ナリタタイシンの鞍上は武豊騎手。早くも天才の名をほしいままにしていたが、過去3回騎乗した皐月賞では、失格、12着、15着と散々な成績だった。開き直りにも似た「最後の最後に追い出す」という騎乗で、不得手なレースを見事に克服した一戦だったともいえるだろう。
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