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安定感+勢いで迎えた大一番 オフサイドトラップは優れた能力の持ち主だった。屈腱炎による休養をたびたび挟みながらも、ここまで26戦6勝・2着8回・3着5回。掲示板を外したのは、流れに乗り切れなかった皐月賞や距離不向きの日本ダービーなど、敗戦理由の明らかな4戦だけ。先行力を駆使し、勝ち切れないながらも決して大崩れしない、安定感抜群の馬だといえた。 勝ち味の遅さも、7歳になったこの年に払拭。七夕賞では逃げるタイキフラッシュをクビの差だけ差し切って重賞初制覇を果たし、続く新潟記念でもハナ差の勝利で重賞連覇。 こうして安定感に勢いもプラスしたうえで、オフサイドトラップは1998年・第118回天皇賞に出走したのである。 ゴールできなかった悲劇の快速馬 だがこのレースは、勝った馬でも負けた馬でもなく、“ゴールできなかった馬”が主役を務めた一戦として記憶されることになる。その主役とは、サイレンススズカだ。 天下一品のスピードを持ちながらもそれをコントロールすることが出来ず、圧勝と惨敗を繰り返していたサイレンススズカ。が、この年に入って快進撃を見せ、バレンタインS、中山記念、小倉大賞典、金鯱賞、そして宝塚記念と、5連勝でGIタイトルを手にしていた。秋初戦の毎日王冠でもエルコンドルパサーやグラスワンダーを相手にしない快速で逃げ切り勝ち。中距離最強の称号を勝ち取り、単勝オッズ1.2倍という断然人気でこの天皇賞に臨んでいたのである。 サイレンススズカは快調に飛ばした。が、4コーナーで骨折、競走中止。東京競馬場は悲鳴に包まれ、多くのファンが苦しそうにたたずむサイレンススズカの様子を見つめた。 執念でつかんだ初GI それでも容赦なくレースは続くのである。ここで、まさに容赦のない走りを見せたのがオフサイドトラップだった。 サイレンススズカの故障で、その後ろを追走していた何人かの騎手がファンと同じように衝撃を受け、一瞬だけ、時間が止まったようになった。ただ1頭オフサイドトラップとその鞍上・柴田善臣騎手だけは、ここぞとばかりにスパート、一気に先頭を奪う。 何度も故障に見舞われ、走る喜びを奪われ続けたオフサイドトラップ。他の馬の悲劇に付き合っている暇などない。ただひたすら、ゴールを目指して駆けるだけ。その執念が実って、オフサイドトラップは勝利をつかんだのである。 レース後、当然のように話題は予後不良となったサイレンススズカに集中した。勝利を称える声の少ない中で盾を戴いたオフサイドトラップは、天皇賞・秋の歴代1着馬のうち、もっとも不運な勝ち馬だといえるのかも知れない。
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