※このページは、弊社が配布する広報冊子に掲載した記事を、ピーター・フランクル氏のご厚意により一部説明を加筆してご紹介してい ます。 |

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数学オリンピックという、毎年夏に開催されているコンテストで、恒例になっているゲームがあります。 数千人の受験者が、それぞれ好きな自然数(正の整数)を1つだけ書き、それを集計して、1人だけしか書かなかった「孤独な自然数」の中で、最も小さい数字を書いた人が賞品をもらえるというゲームです。 このゲームの最良の戦略を考えるのはなかなかの難題です。許されたいちばん小さな数字は1ですが、「1」と書く人は何人もいるでしょうし、ほかの1桁の数字もおそらく「孤独」にはならないでしょう。実際、これまでの優勝者が書いた数字は、すべて2桁の数字です。 競馬の予想も似ていて、勝つ確率が高いと誰もが思う馬には人気が集まり、そこに賭けてもうま味はありません。ほかの人が見過ごしている馬で、勝つ確率のいちばん高い馬はどれか。競馬ファンの多くが常に考えていることでしょう。 競馬は数学ゲーム以上に複雑ですが、貴方の脳をリフレッシュするために、簡単な例で先ほどの「孤独な自然数」ゲームの戦略を考えてみましょう。 ゲーム理論で最善の戦略は、確率的で考えます。たとえば、Aさんは1、2、3という数字をそれぞれp、q、rの確率で書くとしてみましょう(p+q+r=1、つまり4以上の数字は絶対に書かない)。そのときBさんはどうすればよいのかを考えてみます。 もしBさんが1を書くと、負けることはありません。というのは、Aさんが1を書いても(確率p)引き分けとなり、そのほかならばBさんの勝ちになるからです。ところがBさんが3を書いてしまうとBさんに勝ち目はありません。2を書いたときは、Aさんが1を書いたときは負けて、3を書いたならば勝つのです。Bさんの見込める利益(数学的な用語で『期待値』)は、1を書くと(q+r)×100円、2を書くと(r−p)×100円で、やはり1を書いたほうがよいことがわかります(q+r > r−q)。 結局このゲームの場合、AさんBさん共にずっと1を書き続けることが最善の戦略になるのです。 みんな1を書きたいはずですが、誰かとダブれば2を書いた人に勝ちをさらわれます。さらに3以上の数字を書くのは明らかに不利です。 そこでAさんとBさんはそれぞれ確率xとyで1を、確率(1−x)と(1−y)で2を書くことにします(表1、表2)。 それをもとに、Cさんが1を書いたときと、2を書いたときの見込める儲け(数学的には「期待値」という)を表5にまとめました。表5で、Cさんが1を書くときの儲けの式からCさんが2を書くときの儲けの式を引くと、200(1−(x+y))になります。つまりx+y<1のとき、Cさんはずっと1を書くほうが儲けが多くなり、x+y>1のときにはずっと2を書くほうが儲けが多いという結論が出ます。x+y=1のときは1を書いても2を書いても儲けは変わりがありません。 たとえばAさんとBさんがグルになって、Aさんはずっと1を、Bさんはずっと2を書くと、Cさんは何を書いても負けることになってしまいます。ズルがなく、3人共1と2を2分の1の確率で書くと、ゲームのいわゆる「ナッシュ均衡」となり、3人共4分の1の確率で勝って、4分の1の確率で勝負がつかないのです。 単純な問題でも、ベストの戦略決定には計算が必要になります。ましてや競馬だと、オッズや勝率などのデータを通して他人の行動を想像し、自分の賭け方を決めなければなりません。それぞれのレースについて、期待値が最大となるたった1種類の馬券はどれか。こんな難問を、毎回探求しておられる競馬ファンの皆さんに、数学者は素直に敬意を表します。
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