セレクションセール2023 セレクションセールの歴史

日高軽種馬農協の主催するセレクションセールは、従来の北海道特別市場が、略称を改められた形で2001年から開催されている。

2002年から2010年までは当歳市場も併設し、2日間で開催を行ってきたものの、当歳市場は2011年から中止。2011年には360頭の上場があった1歳市場を2日間に分割して開催を継続したが、2012年からは1日だけの開催となった。

セールの選考委員会が定める「血統基準」と「実馬検査」をクリアした上場馬は、“セレクション”の呼び名に相応しい質を有しており、それに伴った総売上額や最高落札馬の価格に加え、高い売却率を記録してきた。

特に過去3年の数字の伸びは目覚ましく、2020年の総売上額は32億6300万円と初めて30億円を突破。2021年も36億5070万円とセールレコードを更新しただけでなく、2011年以来の2日間開催となった昨年は、48億5300万円の総売上額と、過去最高となる87.4%の売却率を記録。2日間開催が継続された今年も、セールレコードを更新するような取引が期待される。

その後押しとなるのが、近年のセレクションセール出身馬の活躍と言えるだろう。2019年のセレクションセールに上場されたジャックドールは、4歳時の金鯱賞をコースレコードで駆け抜けて重賞初制覇を飾る。その後はGTの壁に阻まれるも、昨年のリベンジを果たすべく出走した大阪杯を、レースレコードで優勝。秋競馬も更なる活躍が期待される。

ジャックドール

ジャックドール
2023年大阪杯
「セレクションセール2019」1歳(3200万円)

同じ年のセレクションセールからは、ノースブリッジ(アメリカJCC、エプソムC)、シゲルピンクルビー(フィリーズレビュー)、リプレーザ(兵庫チャンピオンシップ)も取引されている。ジャックドール、ノースブリッジ、シゲルピンクルビーは父がモーリス、リプレーザはリオンディーズと、いずれもこの世代が初年度産駒となる。セレクションセールでは種牡馬実績はなくとも、話題性に溢れた新種牡馬の産駒たちを積極的に上場されてきた。

ノースブリッジ

ノースブリッジ
2023年アメリカジョッキークラブカップ
「セレクションセール2019」1歳(3200万円)

新種牡馬の産駒でもセレクションセールへの上場が叶えられる事実は、生産者側にとっても、牧場期待の繁殖牝馬に新種牡馬を配合していくという流れを生み出している。

こうした新種牡馬の産駒だけでなく、地方競馬の盛り上がりに比例するかのように、年々ダートサイヤーの産駒も高い評価を集めている。そこにリーディングサイヤー上位にランクインしている種牡馬の産駒もずらりと並ぶラインナップは、まさに多種多彩。今年のセレクションセールには、1歳馬301頭が上場を予定。その中には新種牡馬のサートゥルナーリア、モズアスコット、ルヴァンスレーヴといった新種牡馬の産駒も多数名を連ねている。

各世代からGT馬を送り出しているキタサンブラック産駒も5頭が上場を予定。まさに血統面からも注目を集めそうな今年の上場馬たちだが、その全てが「実馬検査」でも合格点をもらった、外見的にも素晴らしい馬ばかりとなる。

馬によっては配合の時点からセレクションセールの上場を目標として、多くの購買者の目に留まるような素晴らしい馬を作り上げてきた。

サラブレッドは「走る芸術品」とも言われるが、セレクションセールの上場馬たちもまた、生産者が配合から吟味を重ねていき、数年かけて作り上げてきた、「芸術品」とも言える。ただ、鑑賞するための芸術品とは違って、ここで取引された馬たちは、競馬で成績を残していかなければならない。

ただ、近年のセレクションセール取引馬の活躍からしても、今年の取引馬からも競馬界を盛り上げるような活躍馬が誕生してくるに違いない。見どころ満載のセレクションセールに、是非とも注目してほしい。

注記:金額は、全て税抜金額
注記:当コンテンツは、2023年7月3日時点での情報を基に制作しています。

ライタープロフィール

村本浩平(競馬ライター)

北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。